ランダウ力学 §24問題1 解説

投稿日:  更新日:2022/09/02

物理学 力学

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ランダウ゠リフシッツ理論物理学教程の力学(増訂第3版)の§24の問題1の解説です.

問題

3個の原子からなる対称な直線上の分子ABA(図28)の振動数を求めよ. 分子のポテンシャルエネルギーは距離AB, BAおよび角ABAにだけ依存すると仮定する.
図28図28

解答作成

  1. x軸方向のLagrangianは,
    L=mA2(x˙12+x˙32)+mB2x˙22(1)k12{(x1x2)2+(x3x2)2}
    となる. 並進運動の消去
    mAx1+mBx2+mCx3=0(2)x2=mAmB(x1+x3)
    により,
    L=mA2(x˙12+x˙32)+mB2mA2mB2(x˙1+x˙3)2k12{x1+mAmB(x1+x3)}2(3)k12{x3+mAmB(x1+x3)}2
    となる. ここで, 新しい座標
    {Qa=x1+x3Qb=x1x3
    を導入すると,
    (4){x1=12(Qa+Qb)x3=12(QaQb)
    となる. (3), (4)より,
    (5)L=mAμ4mBQ˙a2+mA4Q˙b2k1μ24mB2Qa2k14Qb2
    となる(μ=2mA+mBは, 分子全体の質量である). ゆえに, Qa, Qbは基準座標となる.
    座標Qaの振動数は
    (6)ωa=k1μmAmB
    となる. (4)より, これはx1=x3の振動に対応する. (2), (4)より, それぞれの原子の振動は図28a)のようになる.
    本編図28a)
    図28a)
    座標Qbの振動数は
    (7)ωb=k1mA
    となる. (4)より, これはx1=x3の振動に対応する. (2), (4)より, それぞれの原子の振動は図28b)のようになる.
    本編図28b)
    図28b)


  2. y軸方向のLagrangianは,
    (8)L=mA2(y˙12+y˙32)+mB2y˙22k2l22δ2
    となる. ただし, δは角度ABAのπからの差で,
    (9)δ=1l{(y1y2)+(y3y2)}
    となる*1. 並進運動の消去
    mAy1+mBy2+mCy3=0(10)y2=mAmB(y1+y3)
    と回転運動の消去*2
    (11)y1=y3
    により,
    (12)L=mAμmBy˙12k2l22δ2
    となる. ここから, δに関する振動数
    (13)ωδ=2k2μ2mAmB
    が得られる.

本編での議論により, この分子の各運動の自由度は

  • 一直線上での分子全体としての並進運動:1
  • 一直線上での振動:2
  • 一直線上からはずれる並進運動:2
  • 一直線上からはずれる回転運動:2
  • 一直線上からはずれる振動:2

となる. x軸方向のLagrangianから得られた振動数ωa, ωbが, 「一直線上での振動:2」に対応する. y軸方向のLagrangianから得られた振動数ωδは「一直線上からはずれる振動:2」に対応するが, 対称性よりこの2つの自由度の振動はどちらも同じ振動数ωδをもつ.

参考文献

Landau, L. D.; Lifshitz, E. M. 力学. 広重徹, 水戸巌訳, 増訂第3版, 東京図書, 1974, 214p.

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脚注

*1 : 下の図のように考えると,

y1y2l=sinδ1δ1,y3y2l=sinδ1δ2

となる. ゆえに,

δ=δ1+δ2=1l{(y1y2)+(y3y2)}

となる.

角度$\delta$を考える際の図

*2 : 座標原点を2のつりあいの位置にとると,

mA(r10×u1+r30×u3)=0

となるから, x成分, y成分, z成分のそれぞれで計算すると,

{y10z1z10y1+y30z3z30y3=0,z10x1x10z1+z30x3x30z3=0,x10y1y10x1+x30y3y30x3=0

となるが, つり合いの位置はy10=y30=z10=z30=0, x10=x30となるから, 最終的にz成分の式のみが残り,

y1y3=0,y1=y3

となる.

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