ランダウ力学 §9問題3 解説

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物理学 力学

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ランダウ゠リフシッツ理論物理学教程の力学(増訂第3版)の§9の問題3の解説です.

問題

つぎのような場のなかでの運動に際して, 運動量$\bm{P}$および角運動量$\bm{M}$のどの成分が保存されるか.
  1. 無限に広がった一様な平面の場.
  2. 無限に長い一様な円柱の場.
  3. 無限に長い一様なプリズムの場.
  4. 2つの点の場.
  5. 無限に広がった一様な半平面の場.
  6. 一様な円錐の場.
  7. 一様な円環の場.
  8. 無限にのびた一様な円柱状らせんの場.

解答作成

  1. 無限に広がった平面を$xy$平面とすると, 力学系の性質が不変である移動と保存される量は, 表1のようになる.
    表1
    力学系の性質が不変である移動保存される量
    $x$軸に沿った平行移動$P_x$
    $y$軸に沿った平行移動$P_y$
    $z$軸まわりの回転$M_z$
    例えば,
    \begin{align} U(\bm{r}) &= \left\{ \begin{aligned} 1 &\quad (z = 0) \\ 0 &\quad (\text{others}) \end{aligned} \right. \nonumber \end{align}
    のような場を考えればよいであろう.

  2. 円柱の軸を$z$軸とすると, 力学系の性質が不変である移動と保存される量は, 表2のようになる.
    表2
    力学系の性質が不変である移動保存される量
    $z$軸に沿った平行移動$P_z$
    $z$軸まわりの回転$M_z$
    例えば,
    \begin{align} U(\bm{r}) &= \left\{ \begin{aligned} 1 &\quad (r \leq 1) \\ 0 &\quad (\text{others}) \end{aligned} \right. \nonumber \end{align}
    のような場を考えればよいであろう.

  3. プリズム(角柱)の軸を$z$軸とすると, 力学系の性質が不変である移動と保存される量は, 表3のようになる.
    表3
    力学系の性質が不変である移動保存される量
    $z$軸に沿った平行移動$P_z$
    例えば, 四角柱を例にして
    \begin{align} U(\bm{r}) &= \left\{ \begin{aligned} 1 &\quad (-1 \leq x \leq 1 , -1 \leq y \leq 1) \\ 0 &\quad (\text{others}) \end{aligned} \right. \nonumber \end{align}
    のような場を考えればよいであろう.

  4. 2つの点は$z$軸上にあるとすると, 力学系の性質が不変である移動と保存される量は, 表4のようになる.
    表4
    力学系の性質が不変である移動保存される量
    $z$軸まわりの回転$M_z$
    例えば,
    \begin{align} U(\bm{r}) &= \left\{ \begin{aligned} 1 &\quad ((x,y,z) = (0,0,1) , (0,0,-1)) \\ 0 &\quad (\text{others}) \end{aligned} \right. \nonumber \end{align}
    のような場を考えればよいであろう.

  5. 半平面は$y$軸で仕切られた$xy$平面とすると, 力学系の性質が不変である移動と保存される量は, 表5のようになる.
    表5
    力学系の性質が不変である移動保存される量
    $y$軸に沿った平行移動$P_y$
    例えば,
    \begin{align} U(\bm{r}) &= \left\{ \begin{aligned} 1 &\quad (z=0 , x>0) \\ 0 &\quad (\text{others}) \end{aligned} \right. \nonumber \end{align}
    のような場を考えればよいであろう.

  6. 円錐の軸を$z$軸とすると, 力学系の性質が不変である移動と保存される量は, 表6のようになる.
    表6
    力学系の性質が不変である移動保存される量
    $z$軸まわりの回転$M_z$
    例えば,
    \begin{align} U(\bm{r}) &= \left\{ \begin{aligned} 1 &\quad (0 < z < 1 , 0 < r < 1-z) \\ 0 &\quad (\text{others}) \end{aligned} \right. \nonumber \end{align}
    のような場を考えればよいであろう.

  7. 円環の軸を$z$軸とすると, 力学系の性質が不変である移動と保存される量は, 表7のようになる.
    表7
    力学系の性質が不変である移動保存される量
    $z$軸まわりの回転$M_z$
    例えば,
    \begin{align} U(\bm{r}) &= \left\{ \begin{aligned} 1 &\quad (0 < z < 1 , - \sqrt{1-z^2} < r < \sqrt{1-z^2}) \\ 0 &\quad (\text{others}) \end{aligned} \right. \nonumber \end{align}
    のような場を考えればよいであろう.

  8. らせんの軸を$z$軸とすると,
    • 「$z$軸のまわりに角度$\delta \varphi$だけ回転し, $z$軸に沿って$\displaystyle \frac{h}{2\pi} \delta \varphi$だけ平行移動させる」という移動
    に関して, 力学系の性質は不変である(ただし, $h$はらせんの歩みを示し, 1周(角度$2\pi$)だけ回転すると$h$だけらせんが進むことを意味する). そのときのLagrangianの変化は
    \begin{align} \delta L &= \frac{\partial L}{\partial z} \delta z + \frac{\partial L}{\partial \varphi} \delta \varphi \nonumber \\ &= \left( \dot{P}_z \frac{h}{2\pi} + \dot{M}_z \right) \delta \varphi = 0 \nonumber \end{align}
    となるが, $\delta \varphi$は任意であるから
    \begin{align} \dot{P}_z \frac{h}{2\pi} + \dot{M}_z &= 0 \nonumber \\ \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} t} \left( M_z + \frac{h}{2\pi} P_z \right) &= 0 \nonumber \\ M_z + \frac{h}{2\pi} P_z &= \text{const} \nonumber \end{align}
    となる. したがって, 保存されるのは$\displaystyle M_z + \frac{h}{2\pi} P_z$である.

参考文献

Landau, L. D.; Lifshitz, E. M. 力学. 広重徹, 水戸巌訳, 増訂第3版, 東京図書, 1974, 214p.

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