ランダウ力学 §32問題7 解説

投稿日:  更新日:2022/09/02

物理学 力学

B!
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ランダウ゠リフシッツ理論物理学教程の力学(増訂第3版)の§32の問題7の解説です.

問題

平面上をころがる一様な円錐の運動エネルギーを見いだせ.

解答作成

(円錐の図を書くのが面倒なので, 本編p.131の図42をご覧ください. )

並進運動のエネルギーと回転運動のエネルギーに分けて考える.

平面上のX軸と円錐とXY平面の接線OAとの間の角度をθとする. この角度は, 円錐が転がっていくにつれて変化する.

並進運動

さて, 並進運動を瞬間的に考えると, Z軸を回転軸とした回転運動と考えられる(ある意味, そのままである). その回転運動の角速度は当然, θ˙である. 座標原点と慣性中心を結ぶ線分のXY平面へ射影した線分の長さはacosα(ただし, 2αは円錐の頂角, aは頂点から慣性中心までの距離)であるから, 慣性中心の運動の速さは

(1)V=aθ˙cosα

である. 円錐の質量をμとすれば, 並進運動の運動エネルギーは

(2)T並進=μ2V2=μa2θ˙22cos2α

となる. 頂点から慣性中心までの距離は,

(3)a=34h

である(こちらの記事参照)から, これを代入すると,

(4)T並進=9μh2θ˙232cos2α

となる.

回転運動

考える慣性主軸の図図 考える慣性主軸.
ベクトルOAが基底ベクトルe1, e3のみで表されるように, 慣性主軸x1, x2を選んでいる.

続いて, 回転運動のエネルギーについて考える. この回転運動の角速度Ωは, 直線OAのまわりの回転の速さとして計算される. すなわち,

(5)V=aΩsinα

となるΩである*1から,

(6)Ω=Vasinα=θ˙cosαsinα

である. 円錐の軸のまわりの慣性モーメントをI3とする. そして, 残りの慣性主軸(x2)としては, 円錐の軸および直線OAに垂直な直線を選ぶ. すなわち, 角速度ベクトルΩの各慣性主軸への射影は, (Ωsinα,0,Ωcosα)となる. ゆえに, 回転運動の運動エネルギーは

(7)T回転=I12Ω2sin2α+I32Ω2cos2α(8)=I12θ˙2cos2α+I32θ˙2cos4αsin2α

となる. ここで, 一様な円錐の慣性モーメントI1, I3§32問題2のeで求められており,

(9)I1=320μ(R2+h24),(10)I3=310μR2

となる(ただし, Rは円錐の底面の半径, hは円錐の高さである). また, 頂点から慣性中心までの距離は, 式(3)で与えられる. さらに, Rは円錐の底面の半径であり, hは円錐の高さであるから, これら2つにはαによって

(11)R=htanα

という関係が成り立つ. これらを代入すると

T回転=3μ40θ˙2cos2α(R2+h24)+3μR220θ˙2cos4αsin2α=3μR2θ˙240(cos2α+2cos4αsin2α)+3μh2θ˙2160cos2α=3μh2θ˙240sin2αcos2α(cos2α+2cos4αsin2α)+3μh2θ˙2160cos2α=3μh2θ˙240(sin2α+2cos2α)+3μh2θ˙2160cos2α=3μh2θ˙240(1+cos2α)+3μh2θ˙2160cos2α(12)=3μh2θ˙240(1+54cos2α)

となる.

並進運動と回転運動の合計

以上から, 求める運動エネルギーは,

(13)T=3μh2θ˙240(1+5cos2α)

である.

参考文献

Landau, L. D.; Lifshitz, E. M. 力学. 広重徹, 水戸巌訳, 増訂第3版, 東京図書, 1974, 214p.

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脚注

*1 : 慣性中心と直線OAの距離がasinαとなる.

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