ランダウ力学 §11問題2 解説

投稿日:  更新日:2022/09/02

物理学 力学

B!
すしぱく様によるフリー素材ぱくたそ(https://www.pakutaso.com/)からの画像をShinoryoが加工した画像

ランダウ゠リフシッツ理論物理学教程の力学(増訂第3版)の§11の問題2の解説です.

問題

つぎの各ポテンシャルエネルギーの場のなかで, 質量mの質点が運動しているとき, その振動の周期をエネルギーの関数として表せ.
  1. U=A|x|n.
  2. U=U0cosh2αx, ただしU0<E<0.
  3. U=U0tan2αx.

解答作成

  1. 本編(11.5)
    (11.5)T(E)=2mx1(E)x2(E)dxEU(x)
    を利用する. 停留点は
    E=A|x|n(1)x=±(EA)1n
    となる(振動なのでA>0であろう). Ux=0で対称であることを利用すれば, 周期T
    T(E)=22m0(EA)1ndxEAxn=22m0(EA)1ndxE1AExn
    となる. ここで,
    (2)y=(AE)1nx
    の置換を用いると,
    T(E)=22mE01(EA)1ndy1yn=22mE1n12A1n01dy1yn
    となる. さらに,
    (3)u=yn
    の置換を用いると,
    T(E)=22mE1n12A1n01u1n1du1u=22mE1n12A1n01u1n1(1u)121du=22mE1n12A1nB(1n,12)=22mE1n12A1nΓ(1n)Γ(12)Γ(1n+12)(4)=22πmΓ(1n)A1nΓ(1n+12)E1n12
    となる.

    ただし, 記法を簡単にするために, ベータ関数(beta function)
    (5)B(x,y)=01tx1(1t)y1dt
    ガンマ関数(Gamma function)
    (6)Γ(z)=0tz1etdt
    を用いた. このベータ関数とガンマ関数の間には,
    (7)B(x,y)=Γ(x)Γ(y)Γ(x+y)
    の関係があり, またガンマ関数の一部には値が直接求められるものもあり, 例えば
    (8)Γ(12)=π
    である.

  2. 本編(11.5)を利用する. 停留点は
    E=U0cosh2αx(9)cosh2αx=U0E
    を満たす点である. この点はU0<E<0の範囲では2つ存在し, x2<x1と定めておく. Ux=0で対称であることを利用すると, 周期T
    T(E)=22m0x1dxE+U0cosh2αx=22m0x1coshαxEcosh2αx+U0dx
    となる. ここで,
    (10)u=sinhαx
    の置換を用いると,
    T(E)=22mα0U0E11E(1+u2)+U0du=22mα|E|0U0E11(U0E1)u2du
    となる. さらに,
    (11)u=U0E1sinθ
    の置換を用いると,
    T(E)=22mα|E|0π2U0E1cosθ(U0E1)(U0E1)sin2θdθ=22mα|E|0π2dθ=22mα|E|π2(12)=π2mα|E|
    となる.

  3. 本編(11.5)を利用する. 停留点は
    E=U0tan2αx(13)tan2αx=EU0
    を満たす点である(振動なのでU0>0であろう). この点はx=0付近では2つ存在し(三角関数の周期性から無限に存在するが, 簡単のためx=0付近の運動領域をみる), x2<x1と定めておく. Ux=0で対称であることを利用すると, 周期T
    T(E)=22m0x1dxEU0tan2αx=22m0x1cosαxdxEcos2αxU0sin2αx
    となる. ここで,
    (14)sinαx=u
    の置換を用いると,
    T(E)=22mα0EE+U0duE(1u2)U0u2=22mα0EE+U0duE(E+U0)u2=22mαE+U00EE+U0duEE+U0u2
    となる. さらに,
    (15)u=EE+U0sinθ
    の置換を用いると,
    T(E)=22mαE+U0EE+U00π2cosθEE+U0EE+U0sin2θdθ=22mαE+U00π2dθ=22mαE+U0π2(16)=π2mαE+U0
    となる.

力学的相似との関係

力学的相似においては, ポテンシャルエネルギーが座標の同次関数

(10.1)U(αr1,αr2,,αrn)=αkU(r1,r2,,rn)

であるときに, 運動方程式は一連の幾何学的に相似な図形を描く. その相似な軌跡の大きさの比をl/lと表すとき,全ての運動の時間(相似な軌跡の上の互いに対応する点の間を運動する時間)は

(10.2)tt=(ll)1k2

の比をなす. エネルギーは

(10.3b)EE=(ll)k

の比をなす. ゆえに,

(17)tt=(EE)1k12

となる. aは(定数が正の場合にはなるが)座標のn次の同次関数である. aの結果を見てみると, 確かに力学的相似の帰結と関連していることが分かる.

参考文献

Landau, L. D.; Lifshitz, E. M. 力学. 広重徹, 水戸巌訳, 増訂第3版, 東京図書, 1974, 214p.

関連記事

Search

About Me

自分の写真
理系大学生でした. Bloggerを利用して発信を行っています.

Labels

Blog Archives