こんにちは, Shinoryoです.
今回は「太陽系の天体の質量と重力」についてまとめてみました.
重力とは
万有引力とは, 物体がその質量に比例して受ける力のことを指します. 古典力学的には, 質量をもった2つの質点には, それぞれお互いに引き合う方向に,
一方, 地球は自転を行っているため, 地球上の物体には重力以外にも遠心力が働いているように見えます. 地球上での事象に関しては, 上記の万有引力とこの遠心力の合力を重力と呼びます. ここで,
:遠心力を考慮しない地球上での重力加速度 :地球半径 :自転の角速度 :緯度
とすると, 真の重力加速度
となります([7]). このように, 自転を考慮した真の重力加速度は, 緯度によって異なることが分かります.
(他にも, 高度によって重力加速度が異なったり, 地球が実は完全な球体ではなかったり, 地球内部の構造変化による重力異常が起きたりと, 重力加速度が変化するさまざまな要因があります. )
地球の自転とは無関係な物体について議論する際には, 重力=万有引力となります. 以下, 自転による遠心力の影響は考えないものとします.
地球の質量の測定
ここで,
:地球上での重力加速度 :地球半径 :万有引力定数 :地球質量
とすると, 運動方程式から
が成り立ちます. よって,
:古典的には, 地上の実験で測定可能. 自由落下の落下時間と落下距離の測定, 単振子の周期の測定など. :古典的には, 地球での緯度間の経線の長さの測定で計算可能. :古典的には, Chavendishの実験(1798)で測定される.
2018年CODATA推奨値による重力加速度[4]はおおよそ
と求められます. なお, The Astronomical Almanac[5]による地球の質量はおおよそ
その他の天体の質量の測定
中心天体のまわりを円運動する衛星天体を仮定します. 2つの物体間に
ここで,
:衛星天体の円運動の半径 :衛星天体の円運動の周期 :衛星天体の質量 :中心天体の質量
とすると,
が成り立ちます(参考:Keplerの第3法則). ゆえに,
太陽の場合
太陽の場合は, 地球を衛星天体としてとらえればよいでしょう. 宇宙航空研究開発機構(JAXA)[6]による太陽と地球の間の平均距離はおおよそ
と求められます. なお, The Astronomical Almanac[5]による太陽の質量はおおよそ
木星の場合
木星の衛星天体として, ここではガニメデを採用します. Planetary Satellite Mean Orbital Parameters[1]によるガニメデの公転半径はおおよそ
と求められます. なお, The Astronomical Almanac[5]による木星の質量はおおよそ
太陽系の天体の質量と重力
The Astronomical Almanac[5]では, 太陽系の惑星の質量がまとめられています. 太陽系の惑星の質量は太陽との比で書かれており, それを計算したものを下の表に示します.
天体名 | 質量 | 質量(地球比) |
---|---|---|
水星 | ||
金星 | ||
地球 | ||
火星 | ||
木星 | ||
土星 | ||
天王星 | ||
海王星 |
太陽系の惑星の質量の地球に対する比率をグラフにしたものが, 下の図になっています. 木星・土星が圧倒的で, 水星・火星はもはや見えないくらいになっていますね.
一方, The Astronomical Almanac[5]では, 太陽系の惑星の半径もまとめられています. それを下の表に示します.
天体名 | 半径 | 半径(地球比) |
---|---|---|
水星 | ||
金星 | ||
地球 | ||
火星 | ||
木星 | ||
土星 | ||
天王星 | ||
海王星 |
太陽系の惑星の半径の地球に対する比率をグラフにしたものが, 下の図になっています. 質量ほどではありませんが, 木星・土星が圧倒的ですね.
惑星表面での重力加速度は,
天体名 | 重力加速度 | 重力加速度(地球比) |
---|---|---|
水星 | ||
金星 | ||
地球 | ||
火星 | ||
木星 | ||
土星 | ||
天王星 | ||
海王星 |
太陽系の惑星の表面での重力加速度の地球に対する比率をグラフにしたものが, 下の図になっています.
おわりに
今回は「太陽系の天体の質量と重力」についてまとめてみました.
太陽系の惑星の表面での重力は, 惑星によってかなりバラバラであることがわかります. 木星型惑星は質量はかなり大きいですが, 密度が低い分惑星半径も大きいので, 重力加速度比は質量比ほどにはならないのですね.
また, 火星は将来人類が移住できるようになるかも, などと言われてはいますが, そこで感じる重力は地球よりもかなり小さいのですね. 火星移住にあたっての問題の1つになりそうですね.
参考文献
該当の部分には[ ]付きで示しています.
- Jet Propulsion Laboratory. “Planetary Satellite Mean Orbital Parameters”. https://ssd.jpl.nasa.gov/?sat_elem, (参照 2020-07-01).
- Landau,L. D.; Lifshitz,E. M. 力学. 増訂第3版. 東京図書, 1974, 214p.
- Physical Measurement Laboratory of NIST. “CODATA Value:Newtonian constant of gravitation”. https://physics.nist.gov/cgi-bin/cuu/Value?bg, (参照 2020-07-01).
CODATA Values of the Fundamental Constants
- Physical Measurement Laboratory of NIST. “CODATA Value:standard acceleration of gravity”. https://physics.nist.gov/cgi-bin/cuu/Value?gn, (参照 2020-07-01).
CODATA Values of the Fundamental Constants
- The Astronomical Almanac. “The Astronomical Almanac Online ― Constants”. http://asa.hmnao.com/SecK/Constants.html, (参照 2020-07-01).
- 宇宙航空研究開発機構(JAXA). “宇宙情報センター/SPACE INFORMATION CENTER:地球”. http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/earth.html, (参照 2020-07-01).
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- 大場 一郎, 中村 純. 理工系の標準力学. 培風館, 2003, 199p.
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