【具体的に解説】太陽系の天体の質量と重力

投稿日:  更新日:2022/09/02

物理学 力学

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こんにちは, Shinoryoです.

今回は「太陽系の天体の質量と重力」についてまとめてみました.

重力とは

万有引力に関する図

万有引力とは, 物体がその質量に比例して受ける力のことを指します. 古典力学的には, 質量をもった2つの質点には, それぞれお互いに引き合う方向に, (1)F=Gm1m2r2 の力が働きます(Gは万有引力定数, m1, m2はそれぞれの質点の質量).

一方, 地球は自転を行っているため, 地球上の物体には重力以外にも遠心力が働いているように見えます. 地球上での事象に関しては, 上記の万有引力とこの遠心力の合力を重力と呼びます. ここで,

  • g0:遠心力を考慮しない地球上での重力加速度
  • R:地球半径
  • ω:自転の角速度
  • φ0:緯度

とすると, 真の重力加速度gは,

gg0Rω2cos2φ0=9.830.034cos2φ0ms2

となります([7]). このように, 自転を考慮した真の重力加速度は, 緯度によって異なることが分かります.

(他にも, 高度によって重力加速度が異なったり, 地球が実は完全な球体ではなかったり, 地球内部の構造変化による重力異常が起きたりと, 重力加速度が変化するさまざまな要因があります. )

地球の自転とは無関係な物体について議論する際には, 重力=万有引力となります. 以下, 自転による遠心力の影響は考えないものとします.

地球の質量の測定

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ここで,

  • g:地球上での重力加速度
  • R:地球半径
  • G:万有引力定数
  • M:地球質量

とすると, 運動方程式から

(2)g=GMR2

が成り立ちます. よって, g, R, Gを測定することができれば, Mが分かります.

  • g:古典的には, 地上の実験で測定可能. 自由落下の落下時間と落下距離の測定, 単振子の周期の測定など.
  • R:古典的には, 地球での緯度間の経線の長さの測定で計算可能.
  • G:古典的には, Chavendishの実験(1798)で測定される.

2018年CODATA推奨値による重力加速度[4]はおおよそg=9.81ms2(標準重力加速度の値), 2018年CODATA推奨値による万有引力定数[4]はおおよそG=6.67×1011m3kg1s2となっています. また, The Astronomical Almanac[5]による地球赤道半径はおおよそR=6.38×106mです. これらと(2)から,

(3)M=5.99×1024kg

と求められます. なお, The Astronomical Almanac[5]による地球の質量はおおよそ5.97×1024kgとなっています.

その他の天体の質量の測定

中心天体のまわりを円運動する衛星天体を仮定します. 2つの物体間にU=α/r(ただし, α>0であり, rは2つの物体間の距離である)のポテンシャルエネルギーが存在する場合, 相対座標は(楕)円運動, 放物線運動, 双曲線運動を行いますが, 簡単のために円運動している場合のみを考えます.

ここで,

  • R:衛星天体の円運動の半径
  • T:衛星天体の円運動の周期
  • m:衛星天体の質量
  • M:中心天体の質量

とすると,

(4)T2=4π2R3G(M+m)

が成り立ちます(参考:Keplerの第3法則). ゆえに, R, T, mが分かれば, Mが分かります(あるいは, Mmとしてよいことが分かっていれば, mは分からなくてもよくなります).

太陽の場合

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太陽の場合は, 地球を衛星天体としてとらえればよいでしょう. 宇宙航空研究開発機構(JAXA)[6]による太陽と地球の間の平均距離はおおよそR=1.50×1011m, 地球の公転周期はおおよそT=3.15×107sとなっています. 地球の質量は無視してしまえば, (4)から,

(5)M=2.01×1030kg

と求められます. なお, The Astronomical Almanac[5]による太陽の質量はおおよそ1.99×1030kgとなっています.

木星の場合

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木星の衛星天体として, ここではガニメデを採用します. Planetary Satellite Mean Orbital Parameters[1]によるガニメデの公転半径はおおよそR=1.07×109m, ガニメデの公転周期はおおよそT=6.18×105sです. ガニメデの質量を無視してしまえば, (4)から,

(6)M=1.90×1027kg

と求められます. なお, The Astronomical Almanac[5]による木星の質量はおおよそ1.90×1027kgとなっています.

太陽系の天体の質量と重力

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The Astronomical Almanac[5]では, 太陽系の惑星の質量がまとめられています. 太陽系の惑星の質量は太陽との比で書かれており, それを計算したものを下の表に示します.

天体名質量質量(地球比)
水星3.30×1023kg0.0553
金星4.87×1024kg0.815
地球5.97×1024kg1
火星6.42×1023kg0.107
木星1.90×1027kg318
土星5.68×1026kg95.2
天王星8.68×1025kg14.5
海王星1.02×1026kg17.2

太陽系の惑星の質量の地球に対する比率をグラフにしたものが, 下の図になっています. 木星・土星が圧倒的で, 水星・火星はもはや見えないくらいになっていますね.

太陽系の惑星の質量の地球に対する比率

一方, The Astronomical Almanac[5]では, 太陽系の惑星の半径もまとめられています. それを下の表に示します.

天体名半径半径(地球比)
水星2.44×106m0.383
金星6.05×106m0.949
地球6.38×106m1
火星3.40×106m0.532
木星7.15×107m11.2
土星6.03×107m9.45
天王星2.56×107m4.01
海王星2.48×107m3.88

太陽系の惑星の半径の地球に対する比率をグラフにしたものが, 下の図になっています. 質量ほどではありませんが, 木星・土星が圧倒的ですね.

太陽系の惑星の半径の地球に対する比率

惑星表面での重力加速度は, (2)に上記のデータを入力することで求められます. それを下の表に示します.

天体名重力加速度重力加速度(地球比)
水星3.70ms20.378
金星8.86ms20.905
地球9.79ms21
火星3.71ms20.379
木星24.8ms22.53
土星10.4ms21.07
天王星8.86ms20.905
海王星11.1ms21.14

太陽系の惑星の表面での重力加速度の地球に対する比率をグラフにしたものが, 下の図になっています. 1より左側の惑星(水星, 金星, 火星, 天王星)が地球より重力加速度が小さい(「軽い」と感じる)惑星, 1より右側の惑星(木星, 土星, 海王星)が地球より重力加速度が大きい(「重い」と感じる)惑星になります.

太陽系の惑星の表面での重力加速度の地球に対する比率

おわりに

今回は「太陽系の天体の質量と重力」についてまとめてみました.

太陽系の惑星の表面での重力は, 惑星によってかなりバラバラであることがわかります. 木星型惑星は質量はかなり大きいですが, 密度が低い分惑星半径も大きいので, 重力加速度比は質量比ほどにはならないのですね.

また, 火星は将来人類が移住できるようになるかも, などと言われてはいますが, そこで感じる重力は地球よりもかなり小さいのですね. 火星移住にあたっての問題の1つになりそうですね.

参考文献

該当の部分には[ ]付きで示しています.

  1. Jet Propulsion Laboratory. “Planetary Satellite Mean Orbital Parameters”. https://ssd.jpl.nasa.gov/?sat_elem, (参照 2020-07-01).
  2. Landau,L. D.; Lifshitz,E. M. 力学. 増訂第3版. 東京図書, 1974, 214p.
  3. Physical Measurement Laboratory of NIST. “CODATA Value:Newtonian constant of gravitation”. https://physics.nist.gov/cgi-bin/cuu/Value?bg, (参照 2020-07-01).
  4. Physical Measurement Laboratory of NIST. “CODATA Value:standard acceleration of gravity”. https://physics.nist.gov/cgi-bin/cuu/Value?gn, (参照 2020-07-01).
  5. The Astronomical Almanac. “The Astronomical Almanac Online ― Constants”. http://asa.hmnao.com/SecK/Constants.html, (参照 2020-07-01).
  6. 宇宙航空研究開発機構(JAXA). “宇宙情報センター/SPACE INFORMATION CENTER:地球”. http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/earth.html, (参照 2020-07-01).
  7. 大場 一郎, 中村 純. 理工系の標準力学. 培風館, 2003, 199p.

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