ランダウ力学 §14問題1 解説

投稿日:  更新日:2022/09/02

物理学 力学

B!
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ランダウ゠リフシッツ理論物理学教程の力学(増訂第3版)の§14の問題1の解説です.

問題

球面振子の運動方程式を積分せよ. 球面振子とは, 重力場のなかで半径lの球の表面を運動する質点mである.

解答作成

球の中心を原点とし, 鉛直下向きの方向を極軸とする球座標では, 本編(4.6)を利用して

(1)L=ml22(θ˙2+sin2θφ˙2)+mglcosθ

となる. 座標φは循環座標であるから, 本編と同様pφないしはMzが保存される, すなわち

(2)Mz=pφ=Lφ˙=ml2φ˙sin2θ=const

となる.

エネルギーは

E=ml22(θ˙2+sin2θφ˙2)mglcosθ(3)=ml2θ˙22+Mz22ml2sin2θmglcosθ

である. これをθ˙について解くと

θ˙=2ml2(E+mglcosθMz22ml2sin2θ)

となり, 変数分離で積分して

(4)t=dθ2ml2(E+mglcosθMz22ml2sin2θ)

となる.

また, (2)から

dφdt=Mzml2sin2θ

となる. これを用いると

dθdφ=ml2sin2θMz2ml2(E+mglcosθMz22ml2sin2θ)

となり, 変数分離で積分して

(5)φ=Mzl2mdθsin2θE+mglcosθMz22ml2sin2θ

となる.

運動可能領域

角度θに関する運動の領域は, 条件

(6)E>Mz22ml2sin2θmglcosθ

すなわち

(7)2m2gl2cos3θ+2ml2Ecos2θ2m2gl2cosθ+Mz22ml2E<0

で決められる. 境界を求める方程式は, cosθの3次方程式となる.

以下, x=cosθとし, 関数f(x)

(8)f(x)=2m2gl2x3+2ml2Ex22m2gl2x+Mz22ml2E

と定める.

  1. f(x)のグラフはxのときf(x), xのときf(x)となるような3次関数のグラフである.

  2. 計算すれば,
    f(1)=f(1)=Mz20
    が容易にわかる.

  3. f(x)の導関数f(x)を計算すると,
    f(x)=6m2gl2x2+4ml2Ex2m2gl2
    であるから, f(x)=0を満たすx
    x=E±E2+3m2g23mg
    である. どちらも実数であり, 符号の方は負であり, +の方は正である. また,
    E2+3m2g2E+3mg<E+3mg
    であるから,
    (0<)E±E2+3m2g23mg<1
    である. a.と併せて考えれば, 極小となるのは0<x<1の範囲であることが分かる.

以上から, f(x)のグラフは, 下の図のようになる.

$f(x)$のグラフ

図のように, 方程式f(x)=01から+1までの区間で高々2つの根をもつ.

  • 2つの根を持てば, その根は球面上の2つの緯線の位置を決定し, 軌跡全体はこの2つの緯線の間に含まれる.

  • 1つの根しかもたなければ, その根は球面上の1つの緯線の位置を決定し, 質点はこの緯線上を運動する.

  • 根を持たない場合は, 運動可能領域がないということになるので, 物理的には存在しないであろう. (この可能性は, 「極小値が正でない」や「f(x)=0が虚数根を持たない」などを説明できれば消える. )

参考文献

Landau, L. D.; Lifshitz, E. M. 力学. 広重徹, 水戸巌訳, 増訂第3版, 東京図書, 1974, 214p.

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