ランダウ力学 §32問題2(d-f) 解説

投稿日:  更新日:2022/09/02

物理学 力学

B!
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ランダウ゠リフシッツ理論物理学教程の力学(増訂第3版)の§32の問題2(d-f)の解説です.

問題

つぎのような一様な物体の主慣性モーメントを求めよ.
  1. 辺の長さがa,b,cの直方体.
  2. 高さh, 底面の半径Rの円錐.
  3. 半軸の長さa,b,cの楕円体.

解答作成

  1. 直方体の密度は一様であるから, 慣性中心は直方体の中心である. そして, 直方体の質量密度ρは直方体の全質量μを用いてρ=μ/abcと書ける.
    長さa,b,cの辺に沿ってそれぞれx1,x2,x3軸をとる. 主慣性モーメントI1は,
    I1=a/2a/2dx1b/2b/2dx2c/2c/2dx3ρ(x22+x32)=μb212+μc212(1)=μ12(b2+c2)
    となる. 主慣性モーメントI2, I3も同様にすれば,
    (2)I2=μ12(c2+a2),(3)I3=μ12(a2+b2)
    となる.

  2. 円錐の密度は一様であるから, 円錐の質量密度ρは円錐の全質量μを用いてρ=3μ/πhR2と書ける.
    まず, 円錐の頂点を原点とする座標系で, 慣性モーメントテンソルの類似のテンソルIikを計算する. 円錐の軸をx3軸に合わせる. 一様な円錐はその対称性から対称こま(symmetrical top)で, いまの場合I1=I2=I(あるいは, 慣性中心に原点を合わせた場合でもI1=I2=I)である. すると, I=(I1+I2)/2であるから,
    I=I1+I22=12(Vdx1dx2dx3ρ(x22+x32)+Vdx1dx2dx3ρ(x32+x12))(4)=ρ2Vdx1dx2dx3(x12+x22+2x32)
    を得る. これを円柱座標に座標変換して積分すると, dx1dx2dx3=rdrdθdzとなる. また, 円錐をx3=zの平面で切ったときの断面は半径Rz/hの円となることを利用して,
    I=ρ20hdz{0Rz/hdr02πdθr(r2+2z2)}=πρ0hdz(R4z44h4+R2z4h2)=πρ(R4h20+R2h35)(5)=3μ5(R24+h2)
    となる. 一方, I3に関しては,
    I3=Vdx1dx2dx3ρ(x12+x22)(6)=ρVdx1dx2dx3(x12+x22)
    を得る. これをIと同様に円柱座標に座標変換して積分すると,
    I3=ρ0hdz(0Rz/hdr02πdθr3)=2πρ0hdzR4z44h4=πρR4h10(7)=3μR210
    となる.
    さて, これを慣性中心のものに直していく. 慣性中心は円錐の軸の上, 頂点から距離a=3h/4のところにある(後に公開予定の記事参照). 公式
    (32.12)Iik=Iik+μ(a2δikaiak)
    より,
    I=Iμa2=3μ5(R24+h2)9μh216,(8)=3μ20(R2+h24),I3=I3(μa2μa2)(9)=3μR210
    となる.

  3. 楕円体の密度は一様であるから, 慣性中心は楕円体の中心である. そして, 楕円体の質量密度ρは楕円体の全質量μを用いてρ=3μ/4πabcと書ける.
    長さa,b,cの半軸に沿ってそれぞれx1,x2,x3軸をとる. 主慣性モーメントI1は,
    I1=Vdx1dx2dx3ρ(x22+x32)(10)=ρVdx1dx2dx3(x22+x32)
    となる. ここで, 楕円体の表面の方程式は,
    (11)x12a2+x22b2+x32c2=1
    であるから,
    (12)x1=aξ,x2=bη,x3=cζ
    の置換で,
    (13)ξ2+η2+ζ2=1
    となる. ゆえに, 置換(12)を用いることで, 楕円体内での体積積分を単位球内での体積積分にすることができる. これを利用すると,
    I1=ρab3c3単位球dξdηdζ(b2η2+c2ζ2)=abcI2(b2+c2)=8πρabc30(b2+c2)(14)=μ5(b2+c2)
    となる*1. 主慣性モーメントI2, I3も同様にすれば,
    (15)I2=μ5(c2+a2),(16)I3=μ5(a2+b2)
    となる.

参考文献

Landau, L. D.; Lifshitz, E. M. 力学. 広重徹, 水戸巌訳, 増訂第3版, 東京図書, 1974, 214p.

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脚注

*1 : 一様な球の主慣性モーメントの計算と一様な球におけるx1,x2,x3軸の対称性から,

I=2ρ3dx1dx2dx3(x12+x22+x32)(17)=2ρdx1dx2dx3x12

となる. ゆえに,

(18)ρdx1dx2dx3x12=I2

を得る. 単位球の場合R=1で, I=8πρ/15となることにも注意せよ.

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