ランダウ力学 §52問題 解説

投稿日:  更新日:2022/09/02

物理学 力学

B!
すしぱく様によるフリー素材ぱくたそ(https://www.pakutaso.com/)からの画像をShinoryoが加工した画像

ランダウ゠リフシッツ理論物理学教程の力学(増訂第3版)の§52の問題の解説です.

問題

U=α/rの中での楕円運動について作用変数を計算せよ.

解答作成

作用変数の計算

作用変数Iiは一般に,

(52.4)Ii=12πpidqi

で与えられる. は有界な運動の区間全体における《前方》および《後方》へのqiの変化についてとられる.

ここでは, 運動の平面での極座標r, φを用いて考える. 中心力の場ではpφ=MzMである(§14参照)から,

(1)Iφ=12π02πpφdφ=M

となる. 一方, 中心力の場における本編での式

(14.5)r˙=drdt=2m(EU(r))M2m2r2

を用いると

(2)pr=Lr˙=mr˙=2m(E+αr)M2r

となるから,

Ir=22πrminrmaxprdr=22πrminrmax2m(E+αr)M2r2dr(3)=αm2|E|M

となる*1.

エネルギーEを作用変数で表す

エネルギーEIr, Iφで表すと,

(4)E=mα22(Ir+Iφ)

となり(E<0であることに注意せよ), エネルギーEIr+Iφにのみ依存している. これは, 運動が縮重していることを意味する. そして, エネルギーEIr+Iφにのみ依存しているということはE/Ir=E/Iφを意味するから, rφに関する基本振動数ωr=E/Ir, ωφ=E/Iφは一致している.

軌道のパラメータを作用変数で表す

軌道のパラメータ

(15.4)p=M2mα,e=12|E|M2mα2

Ir, Iφで表すと,

(5)p=Iφ2mα,e=1(IφIφ+Ir)2

となる. 作用変数Ir, Iφは断熱不変量であることから, 系のパラメータαあるいはmが断熱的に変化するときに, 軌道の離心率eは不変であり, 軌道の半通径pmおよびαに反比例する.

参考文献

Landau, L. D.; Lifshitz, E. M. 力学. 広重徹, 水戸巌訳, 増訂第3版, 東京図書, 1974, 214p.

関連記事

脚注

*1 : 以下, 本編における(15.4)と(15.6)にならい,

(6){e=12|E|M2mα2,a=α2|E|

を用いる. 引力で有界運動をしているから, E<0であることを利用すると,

Ir=rminrmaxr2+αr|E|M22m|E|drr(7)=1πmαarminrmaxa2e2(ra)2rdr

となる. ここで,

(8)ra=aecosξ

の置換を用いると,

Ir=1πmαa0πa2e2a2e2cos2ξaaecosξ(aesinξ)dξ(9)=mαaπ0πe2sin2ξ1ecosξdξ

となる. ここでさらに,

(10)tanξ2=t

の置換を用いると,

Ir=mαaπ0e2(2t1+t2)11e1t21+t221+t2dt=mαaπ08e2t2(1+t2)2{(1e)+(1+e)t2}dt(11)=mαaπ0{2(1e)1+t2+4e(1+t2)22(1e2)(1e)+(1+e)t2}dt

となる. 各項の積分の計算結果は

0dt1+t2=[tan1t]0(12)=π2,0dt(1+t2)2=[12(t1+t2+tan1t)]0(13)=π4,0dt(1e)+(1+e)t2=[11e2tan1(1+e1et)]0(14)=π21e2

である(こちらの積分計算を参照)から,

Ir=mαaπ{π22(1e)+π44e2(1e2)π21e2}(15)=mαa(11e2)

となる. (6)aeを元に戻せば,

Ir=mα22|E|(12|E|M2mα2)(16)=αm2|E|M

が得られる.

Search

About Me

自分の写真
理系大学生でした. Bloggerを利用して発信を行っています.

Labels

Blog Archives