ランダウ力学 §32問題1 解説

投稿日:  更新日:2022/09/02

物理学 力学

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ランダウ゠リフシッツ理論物理学教程の力学(増訂第3版)の§32の問題1の解説です.

問題

分子を, 互いの距離が不変な粒子の系とみなして, 以下の場合について主慣性モーメントを定めよ:
  1. 1本の直線状にならんだ原子からなる分子.
  2. 2等辺3角形をした3原子分子(図36).
  3. 正3角錐の頂点に位置する原子からなる4原子分子(図37).
本編図36図36
本編図37図37

解答作成

  1. x3軸上に原子が並んでいるとすると, I1=I2=I, I3=0となる. 以下, x3軸上の原子の位置をxiのように表す.
    座標原点を分子の慣性中心に選ぶと,
    (1)amaxa=0
    であるから,
    (2)(amaxa)2=ama2xa2+2a>bmambxaxb=0
    となる. したがって,
    (3)ama2xa2=2a>bmambxaxb
    となる.
    ここで, (3)を用いると, (天下り的ではあるが)本編解答の式の右辺は
    1μa>bmamblab2=1μa>bmamb(xaxb)2=1μ(a>bmambxa2+a>bmambxb22a>bmambxaxb)(4)=1μ(a>bmambxa2+a>bmambxb2+ama2xa2)
    となる. ここで, あるaに対してmaxa2の係数の質量mbを見てみると,
    • aより小さい番号b<aの質量mbは第2項より
    • aと同じ番号b=aの質量mbは第3項より
    • aより大きい番号b>aの質量mbは第1項より
    出現することがわかる. ゆえに,
    1μa>bmamblab2=1μa(bmb)maxa2(5)=amaxa2
    となる(μは系全体の質量bmbに等しいことに注意せよ). これは, 主慣性モーメントI=I1=I2そのものである.

  2. 図のようにx1軸, x2軸をとる(底辺(等しい2辺とはことなる辺)の長さがa, 高さがh). 3つの原子すべてにおいてx3=0であるから,
    (6)I1=amax2,a2,(7)I2=amax1,a2,(8)I3=I1+I2
    となる(本編での対称面がある場合の議論も参照).
    各原子の座標は, 質量m1を有するものが(a/2,0)(a/2,0), 質量m2を有するものが(0,h)である. 慣性モーメントテンソルの類似のテンソルは
    (9)I1=m2h2,(10)I2=m1a22
    となる. ここで, 慣性中心の位置(X,Y)を確認すると,
    (11)X=0,(12)Y=m2h2m1+m2
    となる. 本編での公式
    (32.12)Iik=Iik+μ(a2δikaiak)
    を利用すれば,
    I1=I1(2m1+m2)(m2h2m1+m2)2=m2h2m22h22m1+m2=(2m1+m2)m2h2m22h22m1+m2(13)=2m1m2h22m1+m2,I2=I2(2m1+m2){(m2h2m1+m2)2(m2h2m1+m2)2}(14)=m1a22
    となる.

  3. 図のようにx1軸, x2軸, x3軸をとる(底面の正三角形の辺の長さがa, 正三角錐の高さがh). x1軸とx2軸の交点は正三角形の底辺から3a/6の位置にあり(x3軸を考慮しない正三角錐の慣性中心に合わせている), 質量m1を持つ原子の座標はそれぞれ(a/2,3a/6,0), (a/2,3a/6,0), (0,3a/3,0)である. そして, 質量m2をもつ原子の座標は(0,0,h)である. 慣性モーメントテンソルの類似のテンソルは
    (15)I1=m1a22+m2h2,(16)I2=m1a22+m2h2,(17)I3=m1a2
    ここで, 慣性中心の位置を確認すると,
    (18)X1=0,(19)X2=0,(20)X3=m2h3m1+m2
    となる. 本編での公式(32.12)を利用すれば,
    I1=I1(3m1+m2)(m2h3m1+m2)2=m1a22+m2h2m22h23m1+m2(21)=3m1m2h23m1+m2+m1a22,I2=I2(3m1+m2)(m2h3m1+m2)2=m1a22+m2h2m22h23m1+m2(22)=3m1m2h23m1+m2+m1a22,I3=I3(3m1+m2){(m2h3m1+m2)2(m2h3m1+m2)2}(23)=m1a2
    となる.

参考文献

Landau, L. D.; Lifshitz, E. M. 力学. 広重徹, 水戸巌訳, 増訂第3版, 東京図書, 1974, 214p.

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