ランダウ力学 §51問題 解説

投稿日:  更新日:2022/09/02

物理学 力学

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ランダウ゠リフシッツ理論物理学教程の力学(増訂第3版)の§51の問題の解説です.

問題

振動数が次の法則によってゆっくりと変化している調和振動子について, ΔIを計算せよ.
(1)ω2=ω021+aeαt1+eαt
ωは, t=でのω=ω0から, t=でのω+=aω0まで変化する. ただし, a>0, αω0としている.

解答作成

特異点の調査

この場合, 本編でのパラメータλの役割は, ωが担う. (1)の両辺をtで微分すると,

2ωω˙=ω02aαeαt(1+eαt)αeαt(1+aeαt)(1+eαt)2(2)=ω02(a1)αeαt(1+eαt)2

となり, 2ω2で割ると,

ω˙ω=ω02(a1)αeαt(1+eαt)2×12ω021+eαt1+aeαt=(a1)αeαt2(1+eαt)(1+aeαt)(3)=αeαt2(11+eαt1a+eαt)

となる. ゆえに, ω˙/ωeαt=1およびeαt=aに極をもつ.

角変数wの積分内の計算

ここで,

(4)w=ωdt

を計算する. x=eαtの置換を用いると,

(5)dx=αxdt

であるから,

w=ω01+aeαt1+eαtdt(6)=ω01+ax1+x1αxdx

となる. さらに,

(7)y2=1+ax1+x

と置換する. これをxについて解くと

(8)x=y2+1y2a

であるから,

(9)dx=2y(a1)(y2a)2dy

となる. ゆえに,

w=ω0αyy2ay2+12y(a1)(y2a)2dy=ω0(a1)α2y2(y2+1)(y2a)dy(10)=2ω0α(1y21ay2a)dy

となる.

角変数wの積分の計算

積分区間の上限は(3)の特異点にとる. eαt=1の特異点をt1, eαt=aの特異点をt2とする. 下限としては任意の実数値をとってよいので, ここではt=0にとることにする.

t=0では, x=1, y2=(1+a)/2であり,

  • a>1のとき1<y2<aで, y21>0, y2a<0
  • a<1のとき1>y2>aで, y21<0, y2a>0

である.

tt1では,

  • a>1のときx1, y2, yi
  • a<1のときx1, y2, y

である.

tt2では,

  • a>1のときx1/a, y2+0, y0
  • a<1のときx1/a, y20, y0i

である.

以下の積分では, t=0では積分に虚数が現れないようにしなければならない. 例えば,

(11)1y21dy=12(1y11y+1)dy

において, a>1のときは1<y<aであるから,

(12)1y1>0,1y+1>0

となり,

1y21dy=12(log(y1)log(y+1))(13)=12logy1y+1

となる. このようにして, a>1なのかa<1なのかで, 採用する原始関数が異なる.

a>1のとき, t=0からt=t1までの積分では,

w=2ω0αy(t=0)y(t=t1)(1y21ay2a)dy=ω0α[logy1y+1+aloga+yay]y(t=0)y(t=t1)=ω0α(alog(1)+実数部分)(14)=ω0αaπi+実数部分

となる*1. また, t=0からt=t2までの積分では,

w=2ω0αy(t=0)y(t=t2)(1y21ay2a)dy=ω0α[logy1y+1+aloga+yay]y(t=0)y(t=t2)=ω0α(log(1)+実数部分)(15)=ω0απi+実数部分

となる. 絶対値が小さい方は, t=0からt=t2までの積分の方のω0απiである.

a<1のとき, t=0からt=t1までの積分では,

w=2ω0αy(t=0)y(t=t1)(1y21ay2a)dy=ω0α[log1y1+y+alogy+aya]y(t=0)y(t=t1)=ω0α(log(1)+実数部分)(16)=ω0απi+実数部分

となる. また, t=0からt=t2までの積分では,

w=2ω0αy(t=0)y(t=t2)(1y21ay2a)dy=ω0α[log1y1+y+alogy+aya]y(t=0)y(t=t2)=ω0α(alog(1)+実数部分)(17)=ω0αaπi+実数部分

となる. 絶対値が小さい方は, t=0からt=t2までの積分の方のω0αaπiである.

以上より, 積分(4)を計算すると, (3)の極の1つ(eαt=a)の方がImwが最小値をとり(以下本編に合わせてw(t2)=w0とする),

(18)Imw0={ω0απ(a>1),ω0αaπ(a<1)

となる.

ΔIの計算

調和振動子に対しては, §50問題より

(19)Λsin2w

であるから, ΛのFourier級数展開

(51.3)Λ=l=eilwΛl

は, その第2項(l=2)だけになる. したがって, 調和振動子に対しては(18)w0を用いて,

(20)ΔIexp(2Imw0)

となる.

参考文献

Landau, L. D.; Lifshitz, E. M. 力学. 広重徹, 水戸巌訳, 増訂第3版, 東京図書, 1974, 214p.

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脚注

*1 : 複素数の範囲では, 対数関数log

(21)logz=ln|z|+iargz(z0)

であることに注意せよ. そして, Imwが正で最小の値をとるようにargのとる値を調整することにも注意せよ.

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