話題になっていたので今更ながら「映画 えんとつ町のプペル」の感想を述べる

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映画

B!
Andreas GlöcknerによるPixabay(https://pixabay.com/)からの画像

こんにちは, Shinoryoです.

今回は, 「映画 えんとつ町のプペル」の話をしたいと思います.

本記事には, 作品のネタバレが含まれます. 作品を初見風に見たい等, ネタバレを見たくない方はご注意ください.

超主要登場人物

ここでは, 超主要な登場人物を2人導入しておきたいと思います.

プペル

プペルの画像図 プペル*1

プペルは, えんとつ町に謎の力で誕生した, 正真正銘文字通りの「ゴミ人間」です. 空から赤い星がゴミ捨て場に落ちて心臓となり, それにゴミがひっつくことで人型のゴミの塊(これに関しては侮辱的な意味はなく, 文字通りのものです)ができあがります.

子どもたちのハロウィンの仮装イベントの中に紛れていました. しかし, 仮装ではないということがばれた途端, 町の人々には怖がられ, 町の治安を守る異端審問官*2に追い回されます.

ルビッチ

ルビッチの画像図 ルビッチ*3

ルビッチは, えんとつ町に暮らす, 煙突掃除の仕事をしている子どもです. 幼いころから父・ブルーノより, えんとつ町の煙の上には星空が広がっているという話を聞かされてきました. そのような「星」の存在を信じて確かめようとする少年です.

ルビッチは煙突掃除の仕事に行く際に, ごみ処理場に運ばれて行きそうになるプペルと出会います. そして, プペルを救出して行動を共にするようになります.

この物語の2つの目的

映画を見る限り, この物語の目的は大きく2つあると思っています.

プペルの安全を確保すること

Mona TootoonchiniaによるPixabay(https://pixabay.com/)からの画像

プペルは文字通りの「ゴミ人間」です. ゴミの塊が意思を持って動いているというのは, 町の人々にとって明らかに緊急事態です. そのため, 町の人々はプペルを捕らえようとしてきます*4.

そのプペルをかわいそうに思ったのか, プペルに害はなさそうな以上通常の人間と同等に扱うべきだと判断したのか, ルビッチはプペルが安全にえんとつ町で暮らせるように, さまざまな手助けを行います.

煙の先の世界を確認し, その事実を世に知らしめること

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ルビッチは, えんとつ町の煙の先にはきれいな星空が広がっていると信じています. 「煙の先がどうなっているのかなんて, 誰にも分からないじゃないか. 」

そういうことで, ルビッチはプペルとともに, 煙の先の世界を確認する方法を模索します. そして, えんとつ町の煙の先には何があるのかを, 世に知らしめようとします.

疑問点 物語におけるプペルの立ち位置とは何なのか

映画を見ていると, 「物語におけるプペルの立ち位置とは何なのか」という点がどうにも引っ掛かりました.

ルビッチの最終目的は「えんとつ町で星空を見ること」だと思います. その最終目的を達成するには, ルビッチの力だけでは足りません. 物語にはつきものですが, こういうものには大体, 知恵を授けてくれたり力を貸してくれたり手伝ってくれたりする「師匠」的な存在が欠かせません.

では, この物語における「師匠」的な存在とはいったい誰なのでしょう. 技術的なものと精神的なものに分かれるかと思います. もちろん, それら2つを兼ねる存在もいるはずです.

  • 技術的なもの
    • ドロシー*5
      ドロシーの画像図 ドロシー*6
    • スコップ
      スコップの画像図 スコップ*7
  • 精神的なもの
    • ブルーノ(父)
      ブルーノの画像図 ブルーノ*8
    • ローラ(母)
      ローラの画像図 ローラ*9
    • (プペル?)

このように, プペルは少なくとも技術的な何かを授けてくれるような存在ではありません. また, 精神的支柱は必ずしもプペルだけではなく, しかもプペルに関してはルビッチより精神的に成長しているとは必ずしも言えないと思います.

さらに言えば, プペルは元から星空を見たいと願っている登場人物ではありません. ルビッチと協力関係を結ぶ必要性が, 正直弱かったのではないかと思っています.

このような点から, 2つの目的「プペルの安全を確保すること」「煙の先の世界を確認し, その事実を世に知らしめること」が, 割と独立してしまっているような気がしてなりません(片方のストーリーがなくても, もう片方のストーリーが十分成立してしまうと思います). 映画の長さと比較して, 「単純」「味気ない」「スカスカ」といった感触が浮かんでしまいます.

「肝心の内容が, 社会風刺が効いている」ためにリピーターを多く獲得しているという見方があります*10. しかし, 上記のような理由で, 2回以上見てもそこまで得るものがなさそうだというのが私の意見です.

その他細かいところ

キャストはかなり豪華ですね

公式サイトを見れば分かるのですが, キャストがとても豪華ですね. 割とキャラクターの方が合わせに行っている感じもあり, うまくはまっていたのではないでしょうか.

最初の展開は渋い

物語の序盤に, ごみ処理場に連れていかれているプペルをルビッチが助けに行く場面があります. トラックを追いかけることになるのですが, その場面のBGMがやけにコミカルなんですよね…….

人の命(結果として人間かと言われると怪しい存在ではあるのですが)が目の前で失われかねないような状況では, かなり緊迫したシーンになるはずです. トラックを追いかけていくときのBGMは, 緊迫感のあるものにした方が良かったんじゃないかなと思っています.

最後の星空:緑色の天体多くないですか

最後の星空に関してなのですが, 緑色の天体がやけに多かったのが気になりました.

恒星のスペクトルは, 基本的には黒体輻射(black body radiation)で表されます. その輻射式の関係上, 人間の目に緑色に映る恒星というのは存在しないはずです.

黒体の温度に対する黒体から放射される光の色の画像図 黒体の温度に対する黒体から放射される光の色*11

だとすれば, 緑色の天体というのは自分で光っていない惑星等*12だと考えられるのですが, ここまで多くなるとは考えにくいはずです.

ちなみに, 無料公開されている絵本だと, 映画の印象よりも自然に感じますね.

最後ルビッチさすがに死んだと思いました

極度のネタバレにはなるのですが, 最後の場面でルビッチはさすがに死んだのではないかと思いましたね. 自己を犠牲に星空の存在を世に知らしめるなんていうTrue Endじみた話なのかと思ってしまいましたが, もちろんそんなことはなかったです.

最後の場面に関しては, 無料公開されている絵本にも触れられていないくらいの話, かつ物語のキーになる話なので, 内容に関する言及は避けておこうと思います.

まとめ

全体として, 物語の本筋としては良かったかもしれませんが, 「なんか味がない」「あっさりとしてしまった」みたいな感想が浮かびました. 細かいところを見ても, 「なんか違うんじゃないか」みたいなものがちょいちょい浮かび上がってきたものです.

最後までご覧いただき, ありがとうございました.

脚注

*1, *3, *6, *7, *8, *9 : 西野亮廣, 「映画えんとつ町のプペル」製作委員会. “『映画 えんとつ町のプペル』公式サイト”. https://poupelle.com/, (参照 2021-03-13).

*2 : 映画で最初に耳にしたときは, 何のことかよくわかりませんでしたね. 漢字で書かれれば意味が理解できますね.

*4 : この行為自体は全く理にかなっていると思っています. 文字通りの「ゴミ人間」が人間に対して何をしてくるか分かったものではないですからね.

*5 : ルビッチとの細かい関係は, 映画内では述べられなかったと記憶しています. 結局(血縁関係の上では)赤の他人なのでしょうか.

*10 : “「映画 えんとつ町のプペル」が興行収入20億円, 観客動員数150万人突破 リピーター獲得の要因は?”. ITmedia ビジネスオンライン. 2021-02-19. https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2102/19/news110.html, (参照 2021-03-14).

*11 : Hołek, CC BY-SA 2.5 PL, via Wikimedia Commons.

*12 : 例えば, 天王星は青緑色に見えます. ザ・緑色という感じではないような気がしますが.

図 1986年にボイジャー2号が撮影した天王星*13

*13 : NASA/JPL-Caltech, Public domain, via Wikimedia Commons.

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