定積分に関する性質「King Property」の紹介

投稿日:  更新日:2022/09/02

数学

B!
Chuk YongによるPixabay(https://pixabay.com/)からの画像

King Propertyは, 関数f(x)の定積分に関する便利な性質です. ここでは, King Propertyとは何か, またどのように役立てることができるかについて紹介します.

King Propertyとは

King Propertyとは, 関数の定積分に関する次のような性質のことを指します.

King Property

関数f(x)の定積分に関して, 以下の式が成り立つ:

(1)abf(x)dx=abf(a+bx)dx.

ただし, a, bは定数である.

特に, b=0とすれば,

(2)0af(x)dx=0af(ax)dx

が得られる.

King Propertyの証明

(1)の右辺に対して, u=a+bxの置換積分を用いれば良いです. すると,

(3)abf(a+bx)dx=baf(u)(du)=abf(u)du

が得られて, 式(1)を示すことができました.

King Propertyのイメージ

King Propertyのイメージは, 下図のようになります. 下図の1つ目と2つ目においては左右反転していただけなので, 色が塗られた面積は等しくなります. この左右の面積は, 式(1)の両辺に等しくなるため, 式(1)が成り立つというイメージです.

King Propertyの活用例

活用例(1)

次の積分を実行せよ:

(4)0π/2sinxsinx+cosxdx.

x=π/2tの置換積分を用いると,

0π/2sinxsinx+cosxdx=π/20sin(π2t)sin(π2t)+cos(π2t)(dt)(5)=0π/2costcost+sintdt

となるから,

(6)0π/2sinxsinx+cosxdx0π/2cosxsinx+cosxdx=0

となる. 一方で,

(7)0π/2sinxsinx+cosxdx+0π/2cosxsinx+cosxdx=0π/2dx=π2

であるから, 式(6), (7)をそれぞれの積分に対して連立方程式のような形で解けば,

(8)0π/2sinxsinx+cosxdx=π4,(9)0π/2cosxsinx+cosxdx=π4

が得られる.

活用例(2)

次の積分を実行せよ:

(10)01exex+e1xdx.

x=1tの置換積分を用いると,

01exex+e1xdx=10e1te1t+et(dt)(11)=01e1tet+e1tdt

となるから,

(12)01exex+e1xdx01e1xex+e1xdx=0

となる. 一方で,

(13)01exex+e1xdx+01e1xex+e1xdx=01dx=1

であるから, 式(12), (13)をそれぞれの積分に対して連立方程式のような形で解けば,

(14)01exex+e1xdx=12,(15)01e1xex+e1xdx=12

が得られる.

活用例(3)

次の積分を実行せよ:

(16)06(x1)(x2)(x3)(x4)(x5)dx.

(東京理科大 2021 改)

x=6tの置換積分を用いると,

06(x1)(x2)(x3)(x4)(x5)dx=60(5t)(4t)(3t)(2t)(1t)(dt)=06(5t)(4t)(3t)(2t)(1t)dt(17)=06(t1)(t2)(t3)(t4)(t5)dt

となるから,

(18)206(x1)(x2)(x3)(x4)(x5)dx=0

となる. つまり,

(19)06(x1)(x2)(x3)(x4)(x5)dx=0

となる.