Fermatの最終定理の無限降下法による証明($n = 4$)

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数学

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Fermatの最終定理は, 数学史上, 証明されるのが最も難しかった問題としてよく知られている. 一方で, Fermatの最終定理の$n = 4$の場合については, 比較的証明方法が易しいこともまた知られている. ここでは, Fermatの最終定理の$n = 4$の場合の証明について紹介する.

Fermatの最終定理とは

Fermatの最終定理

$3$以上の自然数$n$に対して,

\begin{align} a^n + b^n &= c^n \end{align}

を満たす自然数の組$(a,b,c)$は存在しない.

敢えて少し強い定理を考える

命題
\begin{align} x^4 + y^4 &= z^2 \end{align}

を満たす自然数の組$(x,y,z)$は存在しない.

実際, Fermatの最終定理($n=4$)の否定が成り立つならば上の命題の否定が成り立つから, 上の命題が成り立つならばFermatの最終定理($n=4$)が成り立つ.

以下, そのような組$(x,y,z)$が存在すると仮定し, その矛盾を示す. その際, $x,y$が互いに素である場合のみを考えれば十分である.

原子Pythagoras数の性質を使う

  • 原子Pythagoras数:$a, b, c$が互いに素であるPythagoras数$(a, b, c)$

命題より

\begin{align} \left( x^2 \right)^2 + \left( y^2 \right)^2 &= z^2 \end{align}

であるから, $(x^2 , y^2 , z)$は原子Pythagoras数である. ゆえに,

  • $m,n$は互いに素
  • $m > n$
  • $m-n$は奇数

を満たす$m,n \in \mathbb{N}$を用いて

\begin{align} x^2 &= m^2 - n^2 \label{1} \\ y^2 &= 2mn \label{2} \\ z &= m^2 + n^2 \label{5} \end{align}

と書き表せる.

式\eqref{1}を

\begin{align} x^2 + n^2 &= m^2 \end{align}

と書き換えると, $(x,n,m)$は原子Pythagoras数である. 同様な自然数$r,s$を用いて

\begin{align} x &= r^2 - s^2 \\ n &= 2rs \label{4} \\ m &= r^2 + s^2 \label{3} \end{align}

となる.

また, 式\eqref{2}より,

\begin{align} \left( \frac{y}{2} \right)^2 &= m \frac{n}{2} \end{align}

であるが, $m$, $n/2$は互いに素であるから, $m$も$n/2$も平方数でなければならない. 同様に, 式\eqref{4}より

\begin{align} \frac{n}{2} &= rs \end{align}

であるから, $r$も$s$も平方数である.

以上より, $r,s,m$は$u,v,w \in \mathbb{N}$を用いて

\begin{align} r &= u^2 , \quad s = v^2 , \quad m = w^2 \nonumber \end{align}

と表すことができ, これを式\eqref{3}に代入すると,

\begin{align} u^4 + v^4 &= w^2 \end{align}

を得る.

無限降下法

ここで, 式\eqref{5}より

\begin{align} z &= m^2 + n^2 > m^2 = w^4 \geq w \end{align}

であるから, この議論を繰り返すと, $x^4 + y^4 = z^2$を満たすような$z$がいくらでも小さい自然数の組$(x,y,z)$を構成できることになる. しかし, 自然数の最小が$1$であることに矛盾する.

以上より, 命題は成り立つから, Fermatの最終定理($n=4$)が成り立つ.