Fermatの最終定理の無限降下法による証明(n=4)

投稿日:  更新日:2022/09/02

数学

B!
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Fermatの最終定理は, 数学史上, 証明されるのが最も難しかった問題としてよく知られている. 一方で, Fermatの最終定理のn=4の場合については, 比較的証明方法が易しいこともまた知られている. ここでは, Fermatの最終定理のn=4の場合の証明について紹介する.

Fermatの最終定理とは

Fermatの最終定理

3以上の自然数nに対して,

(1)an+bn=cn

を満たす自然数の組(a,b,c)は存在しない.

敢えて少し強い定理を考える

命題
(2)x4+y4=z2

を満たす自然数の組(x,y,z)は存在しない.

実際, Fermatの最終定理(n=4)の否定が成り立つならば上の命題の否定が成り立つから, 上の命題が成り立つならばFermatの最終定理(n=4)が成り立つ.

以下, そのような組(x,y,z)が存在すると仮定し, その矛盾を示す. その際, x,yが互いに素である場合のみを考えれば十分である.

原子Pythagoras数の性質を使う

  • 原子Pythagoras数a,b,cが互いに素であるPythagoras数(a,b,c)

命題より

(3)(x2)2+(y2)2=z2

であるから, (x2,y2,z)は原子Pythagoras数である. ゆえに,

  • m,nは互いに素
  • m>n
  • mnは奇数

を満たすm,nNを用いて

(4)x2=m2n2(5)y2=2mn(6)z=m2+n2

と書き表せる.

(4)

(7)x2+n2=m2

と書き換えると, (x,n,m)は原子Pythagoras数である. 同様な自然数r,sを用いて

(8)x=r2s2 (9)n=2rs(10)m=r2+s2

となる.

また, 式(5)より,

(11)(y2)2=mn2

であるが, m, n/2は互いに素であるから, mn/2も平方数でなければならない. 同様に, 式(9)より

(12)n2=rs

であるから, rsも平方数である.

以上より, r,s,mu,v,wNを用いて

r=u2,s=v2,m=w2

と表すことができ, これを式(10)に代入すると,

(13)u4+v4=w2

を得る.

無限降下法

ここで, 式(6)より

(14)z=m2+n2>m2=w4w

であるから, この議論を繰り返すと, x4+y4=z2を満たすようなzがいくらでも小さい自然数の組(x,y,z)を構成できることになる. しかし, 自然数の最小が1であることに矛盾する.

以上より, 命題は成り立つから, Fermatの最終定理(n=4)が成り立つ.