無限べき乗の収束

投稿日:  更新日:2022/09/23

数学

B!
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ここでは, 無限べき乗の収束に関して議論を行っていきたいと思います.

無限べき乗とは

ここで取り扱う「無限べき乗」とは, 正の定数aに対して,

(1)aaaaa

のことを指します.

例えば, a=1のときは明らかに

(2)11111=1

となります. 一方, a=2のときは

(3)22222

のように正に発散します(22=4, 222=16, 2222=65536, ). 基本的にはaが小さければ収束し, aが大きければ発散すると考えられます. その境目はどこなのか, 考えていきましょう.

無限べき乗の収束の視覚化

無限べき乗の収束・発散の議論は, しばしば以下のように視覚化されます.

y=xのグラフとy=axのグラフを用意します. ここではa=1.2として, グラフを描いてみます.

2022-09-05T03:44:26.370137 image/svg+xml Matplotlib v3.5.2, https://matplotlib.org/

このグラフから, x座標の値として[a,aa,aaa,]を求めていくことを考えます.

まず, (1,1)から(1,a)へ線を(縦に)引きます. そこから(a,a)へと線を(横に)引きます. このようにして, 1段階目のaが分かります.

2022-09-05T03:44:27.499133 image/svg+xml Matplotlib v3.5.2, https://matplotlib.org/

さらに, (a,aa)へと線を(縦に)引きます. そこから(aa,aa)へと線を(横に)引きます. このようにして, 2段階目のaaが分かります.

2022-09-05T03:44:27.647946 image/svg+xml Matplotlib v3.5.2, https://matplotlib.org/

さらに, (aa,aaa)へと線を(縦に)引きます. そこから(aaa,aaa)へと線を(横に)引きます. このようにして, 3段階目のaaaが分かります.

2022-09-05T03:44:27.797790 image/svg+xml Matplotlib v3.5.2, https://matplotlib.org/

以上を繰り返していくことで, aaaaaが求まります. a=1.2の場合, y=xのグラフとy=axのグラフに交点がありますので, 1.21.21.21.21.2の値はその交点の座標の値になるでしょう.

逆に, 以上のことをa=1.5に対して行うと, y=xのグラフとy=axのグラフに交点がないので, 1.51.51.51.51.5の値は発散してしまうことが分かります.

2022-09-05T03:44:31.106657 image/svg+xml Matplotlib v3.5.2, https://matplotlib.org/

無限べき乗の収束の収束・発散

このように考えると, 「無限べき乗aaaaaが収束するか」という問題は, 「y=xのグラフとy=axのグラフが交わるか」という問題に置き換わることになります. これを利用して, 無限べき乗aaaaaが収束するaの上限を求めていきましょう.

aが無限べき乗収束の上限値である場合, y=xのグラフとy=axのグラフが「ギリギリ交わっている」状態, つまり「接している状態」であるといえます. よって, その接点では

(4){x=ax,ddx(x)=ddx(ax)

の2式が成り立たなくてはなりません. それぞれの式の意味は,

  • そのx座標では2つのグラフが交わる
  • そのx座標では2つのグラフの傾きが一致する

になります.

2022-09-05T03:57:46.767028 image/svg+xml Matplotlib v3.5.2, https://matplotlib.org/

まず, 微分の方の式を計算すると,

(5)x=logalogae

を得ます. ただし, eは自然対数の底を表します. これを微分ではない式に代入して計算することで,

(6)a=e1/e=1.445

を得ます. よって, y=xのグラフとy=axのグラフが接している状態になるのは, a=e1/eの場合に限り, その接しているx座標はx=logalogaeということになります.

ゆえに, 無限べき乗aaaaa (ただし, a>0)は,

  • ae1/eの場合:収束
  • a>e1/eの場合:発散

となります.