無限べき乗の収束

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数学

B!
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ここでは, 無限べき乗の収束に関して議論を行っていきたいと思います.

無限べき乗とは

ここで取り扱う「無限べき乗」とは, 正の定数$a$に対して,

\begin{align} a^{a^{a^{a^{a^{\cdots}}}}} \end{align}

のことを指します.

例えば, $a = 1$のときは明らかに

\begin{align} 1^{1^{1^{1^{1^{\cdots}}}}} = 1 \end{align}

となります. 一方, $a = 2$のときは

\begin{align} 2^{2^{2^{2^{2^{\cdots}}}}} \to \infty \end{align}

のように正に発散します($2^2 = 4$, $2^{2^2} = 16$, $2^{2^{2^2}} = 65536$, $\cdots$). 基本的には$a$が小さければ収束し, $a$が大きければ発散すると考えられます. その境目はどこなのか, 考えていきましょう.

無限べき乗の収束の視覚化

無限べき乗の収束・発散の議論は, しばしば以下のように視覚化されます.

$y = x$のグラフと$y = a^x$のグラフを用意します. ここでは$a = 1.2$として, グラフを描いてみます.

2022-09-05T03:44:26.370137 image/svg+xml Matplotlib v3.5.2, https://matplotlib.org/

このグラフから, $x$座標の値として$[a, a^a, a^{a^a}, \ldots]$を求めていくことを考えます.

まず, $(1, 1)$から$(1, a)$へ線を(縦に)引きます. そこから$(a, a)$へと線を(横に)引きます. このようにして, 1段階目の$a$が分かります.

2022-09-05T03:44:27.499133 image/svg+xml Matplotlib v3.5.2, https://matplotlib.org/

さらに, $(a, a^a)$へと線を(縦に)引きます. そこから$(a^a, a^a)$へと線を(横に)引きます. このようにして, 2段階目の$a^a$が分かります.

2022-09-05T03:44:27.647946 image/svg+xml Matplotlib v3.5.2, https://matplotlib.org/

さらに, $(a^a, a^{a^a})$へと線を(縦に)引きます. そこから$(a^{a^a}, a^{a^a})$へと線を(横に)引きます. このようにして, 3段階目の$a^{a^a}$が分かります.

2022-09-05T03:44:27.797790 image/svg+xml Matplotlib v3.5.2, https://matplotlib.org/

以上を繰り返していくことで, $a^{a^{a^{a^{a^{\cdots}}}}}$が求まります. $a = 1.2$の場合, $y = x$のグラフと$y = a^x$のグラフに交点がありますので, $1.2^{1.2^{1.2^{1.2^{1.2^{\cdots}}}}}$の値はその交点の座標の値になるでしょう.

逆に, 以上のことを$a = 1.5$に対して行うと, $y = x$のグラフと$y = a^x$のグラフに交点がないので, $1.5^{1.5^{1.5^{1.5^{1.5^{\cdots}}}}}$の値は発散してしまうことが分かります.

2022-09-05T03:44:31.106657 image/svg+xml Matplotlib v3.5.2, https://matplotlib.org/

無限べき乗の収束の収束・発散

このように考えると, 「無限べき乗$a^{a^{a^{a^{a^{\cdots}}}}}$が収束するか」という問題は, 「$y = x$のグラフと$y = a^x$のグラフが交わるか」という問題に置き換わることになります. これを利用して, 無限べき乗$a^{a^{a^{a^{a^{\cdots}}}}}$が収束する$a$の上限を求めていきましょう.

$a$が無限べき乗収束の上限値である場合, $y = x$のグラフと$y = a^x$のグラフが「ギリギリ交わっている」状態, つまり「接している状態」であるといえます. よって, その接点では

\begin{align} \left\{ \begin{aligned} & x = a^x , \\ & \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} x} \left( x \right) = \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d} x} \left( a^x \right) \end{aligned} \right. \end{align}

の2式が成り立たなくてはなりません. それぞれの式の意味は,

  • その$x$座標では2つのグラフが交わる
  • その$x$座標では2つのグラフの傾きが一致する

になります.

2022-09-05T03:57:46.767028 image/svg+xml Matplotlib v3.5.2, https://matplotlib.org/

まず, 微分の方の式を計算すると,

\begin{align} x &= \log_a \log_a e \end{align}

を得ます. ただし, $e$は自然対数の底を表します. これを微分ではない式に代入して計算することで,

\begin{align} a &= e^{1/e} = 1.445\ldots \end{align}

を得ます. よって, $y = x$のグラフと$y = a^x$のグラフが接している状態になるのは, $a = e^{1/e}$の場合に限り, その接している$x$座標は$x = \log_a \log_a e$ということになります.

ゆえに, 無限べき乗$a^{a^{a^{a^{a^{\cdots}}}}}$ (ただし, $a > 0$)は,

  • $a \leq e^{1/e}$の場合:収束
  • $a > e^{1/e}$の場合:発散

となります.