ここでは, 無限べき乗の収束に関して議論を行っていきたいと思います.
無限べき乗とは
ここで取り扱う「無限べき乗」とは, 正の定数$a$に対して,
のことを指します.
例えば, $a = 1$のときは明らかに
となります. 一方, $a = 2$のときは
のように正に発散します($2^2 = 4$, $2^{2^2} = 16$, $2^{2^{2^2}} = 65536$, $\cdots$). 基本的には$a$が小さければ収束し, $a$が大きければ発散すると考えられます. その境目はどこなのか, 考えていきましょう.
無限べき乗の収束の視覚化
無限べき乗の収束・発散の議論は, しばしば以下のように視覚化されます.
$y = x$のグラフと$y = a^x$のグラフを用意します. ここでは$a = 1.2$として, グラフを描いてみます.
このグラフから, $x$座標の値として$[a, a^a, a^{a^a}, \ldots]$を求めていくことを考えます.
まず, $(1, 1)$から$(1, a)$へ線を(縦に)引きます. そこから$(a, a)$へと線を(横に)引きます. このようにして, 1段階目の$a$が分かります.
さらに, $(a, a^a)$へと線を(縦に)引きます. そこから$(a^a, a^a)$へと線を(横に)引きます. このようにして, 2段階目の$a^a$が分かります.
さらに, $(a^a, a^{a^a})$へと線を(縦に)引きます. そこから$(a^{a^a}, a^{a^a})$へと線を(横に)引きます. このようにして, 3段階目の$a^{a^a}$が分かります.
以上を繰り返していくことで, $a^{a^{a^{a^{a^{\cdots}}}}}$が求まります. $a = 1.2$の場合, $y = x$のグラフと$y = a^x$のグラフに交点がありますので, $1.2^{1.2^{1.2^{1.2^{1.2^{\cdots}}}}}$の値はその交点の座標の値になるでしょう.
逆に, 以上のことを$a = 1.5$に対して行うと, $y = x$のグラフと$y = a^x$のグラフに交点がないので, $1.5^{1.5^{1.5^{1.5^{1.5^{\cdots}}}}}$の値は発散してしまうことが分かります.
無限べき乗の収束の収束・発散
このように考えると, 「無限べき乗$a^{a^{a^{a^{a^{\cdots}}}}}$が収束するか」という問題は, 「$y = x$のグラフと$y = a^x$のグラフが交わるか」という問題に置き換わることになります. これを利用して, 無限べき乗$a^{a^{a^{a^{a^{\cdots}}}}}$が収束する$a$の上限を求めていきましょう.
$a$が無限べき乗収束の上限値である場合, $y = x$のグラフと$y = a^x$のグラフが「ギリギリ交わっている」状態, つまり「接している状態」であるといえます. よって, その接点では
の2式が成り立たなくてはなりません. それぞれの式の意味は,
- その$x$座標では2つのグラフが交わる
- その$x$座標では2つのグラフの傾きが一致する
になります.
まず, 微分の方の式を計算すると,
を得ます. ただし, $e$は自然対数の底を表します. これを微分ではない式に代入して計算することで,
を得ます. よって, $y = x$のグラフと$y = a^x$のグラフが接している状態になるのは, $a = e^{1/e}$の場合に限り, その接している$x$座標は$x = \log_a \log_a e$ということになります.
ゆえに, 無限べき乗$a^{a^{a^{a^{a^{\cdots}}}}}$ (ただし, $a > 0$)は,
- $a \leq e^{1/e}$の場合:収束
- $a > e^{1/e}$の場合:発散
となります.
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