【日本語で解説】Abel変換(アーベル変換)の概要とその導出

投稿日:  更新日:2022/09/02

数学

B!
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Abel変換(アーベル変換; Abel transform)は, 球対称(あるいは軸対称)の関数の解析によく使われる積分変換である. ここでは, Abel変換の導出を行う.

Abel変換の概要 [1]

関数f(r)のAbel変換は

(1)F(y)=2yf(r)rr2y2dr

で与えられる. f(r)r1よりもはやく0に落ちるという条件の下で, 逆Abel変換は

(2)f(r)=1πrdF(y)dydyy2r2

で与えられる.

Abel変換の説明 [1]

図1. 2次元でのAbel変換の幾何学的解釈. 観測者は, 原点から距離yだけ離れたx軸に平行な線に沿って観測する. 観察者が見るのは, 球対称関数f(r)の視線方向の射影である. 観測者は, 原点から十分に離れた場所にあるとするため, x軸と視線方向は平行であると近似する.

f(r)は球対称な関数で, F(y)は原点から距離yだけ離れた視線方向の射影である. 観測者は, 原点から十分に離れた場所にあるとするため, x軸と視線方向は平行であると近似する(図1参照). このとき,

(3)F(y)=f(x2+y2)dx=20f(x2+y2)dx

である. ここで,

(4)r=x2+y2

であるから,

(5)dx=rdrr2y2

であり,

(6)F(y)=2yf(r)rr2y2dr

となる. 以上が, (1)に関する説明である.

Abel逆変換の説明 [1]

図2. (9)から(10)における重積分変換. 灰色に塗りつぶされている領域が積分範囲である.

F(y)に関して部分積分を適用すると,

F(y)=2yf(r)rr2y2dr=2yf(r)(ddrr2y2)dr=[f(r)r2y2]y2yf(r)r2y2dr(7)=2yf(r)r2y2dr

となる(ただし, f(r)r1よりもはやく0に落ちるというということを仮定している). これをyで微分すると,

(8)dF(y)dy=2yyf(r)r2y2dr

を得る. これを利用すると,

1πrdF(y)dydyy2r2=1πr(2yyf(s)s2y2ds)dyy2r2(9)=r(y2yf(s)π(y2r2)(s2y2)ds)dy

となる. 重積分範囲を変換すると(図2参照),

1πrdF(y)dydyy2r2=r(rs2yf(s)π(y2r2)(s2y2)dy)ds=r(f(s))ds=[f(s)]r(10)=f(r)

となる. 以上が, (2)がAbel逆変換となるための説明である.

具体的な積分に関する補足 [2]

(10)の式を追うためには,

(11)rs2y(y2r2)(s2y2)dy=π

が分かれば十分であろう.

y2=zの変数変換を行うと, 2ydy=dzであるから,

(12)rs2y(y2r2)(s2y2)dy=r2s2dz(zr2)(s2z)

となる. さらに,

(13)z=w+s2+r22

の置換を用いることで,

rs2y(y2r2)(s2y2)dy=s2r22s2r22dw(w+s2+r22r2)(s2ws2+r22)=s2r22s2r22dw(w+s2r22)(w+s2r22)(14)=s2r22s2r22dw(s2r22)2w2

となる. さらに,

(15)w=s2r22sinθ

の置換を用いることで,

rs2y(y2r2)(s2y2)dy=2s2r2s2r22π2π2cosθdθ1sin2θ=π2π2dθ(16)=π

となる. 以上で, (11)が示せた.

参考文献

該当の部分には[ ]付きで示しています.

  1. “Abel transform”. Wikipedia. 2020-11-16. https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=Abel_transform&oldid=989003876, (accessed 2021-05-09).
  2. “ランダウ=リフシッツ理論物理学教程を学ぶ人のために”. http://rironbuturi.html.xdomain.jp/, (参照 2020-12-06).